2009年07月03日

美しくない(?)飛行機たち。その2。



さて、前回記事でちらりと触れたバラクーダ。

この飛行機について見てみましょう。

バラクーダと聞いてお酒が飲みたくなったあなたは、もうオヤジ。

第二次大戦中、大英帝国で製造された艦上攻撃機です。

その前に、艦上攻撃機とは何か?ちょっと触れておきましょう。





艦上攻撃機(艦上雷撃機)。

「艦上」と付いているので軍艦(基本的に航空母艦)の上で運用されます。
「攻撃機」は航空機に与えられた「機能」のひとつです。

まず以下のような機種が第二次大戦中の各国海軍にはありました。

艦上戦闘機
=艦隊防空、制空をその目的とする。攻撃時には味方の護衛をし、守る時は自分の艦隊の上で敵機を掃討。
零式艦上戦闘機(日本)
F4Fワイルドキャット、F6Fヘルキャット、F4Uコルセア(米)
シーハリケーン、シーファイア(英)
など。

艦上爆撃機
=急降下爆撃可能な250kg〜500kg爆弾を搭載できる航空機。急降下爆撃で敵艦船を攻撃することをその目的とする。
九九式艦上爆撃機、彗星、流星(日本)
SBDドーントレス、SB2Cヘルダイバー(米)
スクア、バラクーダ(英)
など。

艦上攻撃機
=航空魚雷、800kg爆弾などを搭載できる航空機。魚雷攻撃および水平爆撃で敵艦船を攻撃することをその目的とする。
九七式艦上攻撃機、天山、流星(日本)
TBDデバステイター、TBFアベンジャー(米)
ソードフィッシュ、アルバコア、バラクーダ(英)
など。

まぁ、雷撃で敵艦船をどつく飛行機なわけです。

日本とアメリカは広い太平洋で空母を中心とした艦隊(機動部隊)同士が血みどろのどつき合いをしたわけですが、英国はちょっと状況が違いました。

日米と同じような艦上機を取りそろえていたわけですが、空母の戦略的位置づけ、空母の構造、そしてそれに伴う艦載機の運用も大きく日米とは異なっていたのです。

その事実を象徴するのがイギリスの艦上攻撃機でしょう。

大戦初期(1940年頃)のイギリス艦上攻撃機はフェアリー・ソードフィッシュです。

こんなの。

Fairey_Swordfish.jpg




因みに同じ頃の日本では中島 九七式艦上攻撃機。
真珠湾攻撃から南太平洋海戦くらいまで大活躍。

こんなの。

Nakajima_B5N2_Kate_in_flight.jpg




アメリカではデバステイター。

これ。

TBD_Devastator_2.jpg
(ミッドウェイでは零戦にタコ殴りにされた)





特に飛行機詳しくない方でも、見ておわかりでしょう。

ソードフィッシュ。・・・ふるい。

まるで第一次大戦時の航空機のような複葉アンド固定脚。

最大速度なんて、九七艦攻より150km/h以上遅い220km/h。

でも、これで十分活躍できたんですね。ソードフィッシュ。




何故なら・・・。


イギリスの敵であるドイツとイタリア。


空母が・・・無かったんだもの。

正確に言うと空母は両国とも保有はしたけど戦力化できなかった。

だから日米のようにガチンコで機動部隊同士がぶつかることもない。

ってことは空母から飛んでくる戦闘機もいないわけで、わりと敵機を警戒しなくても活動できた。

厳密には陸上基地から発進してくるメッサーシュミットやフォッケウルフはいたわけだけど、空軍管轄の彼らは対艦運用に訓練されていないし、海上行動も不得意。

そこへ持ってきて、ソードフィッシュは安定感抜群で非常に操縦しやすく、整備も簡単でパイロットや整備員などの評価が高かった。

だからイタリアの真珠湾「タラント空襲」や独戦艦ビスマルク追撃戦に大活躍し、戦争終了間近にはUボート狩りにも使われて、「奇跡の複葉機」であったわけですね。


でもさすがにいつまでもソードフィッシュじゃまずい・・・と思ったのか、イギリス海軍も後継機開発を目論みます。

できたのがフェアリー・アルバコア。


こんなの。

Fairey_Albacore.jpg


って・・・おい!

まだ複葉固定脚かいっ!


さすがに密閉式風防や可変ピッチプロペラなど、細かいところではずいぶんと近代化されたわけだけど、所詮は複葉固定脚。
最大速度も300km/h足らずだったし、何しろソードフィッシュほど扱いやすくなかった。
そのためパイロットや整備員からの評価もイマイチ。
ソードフィッシュより早く退役というハメに。



そこで満を持して登場したのが・・・・。

フェアリー・バラクーダ。


Fairey_Barracuda.jpg

Fairey_Barracuda_Mk_III.jpg

確かに複葉は単葉になった。脚も引っ込むようになった。

でも肩口にくっついた異様に厚い主翼。

中途半端に高い位置にある水平尾翼。

変なところから飛び出している主脚。どうやって引っ込めるんだ?




1943年。まさに同時期に運用開始した日本海軍の天山。

これ。

Nakajima_B6N1.jpg

同じ使用目的でどうしてここまでデザインが違うのか??

やはり分厚い主翼などは速度性能に如実に影響が現れます。

バラクーダの最大速度=367km/h。

天山の最大速度=482km/h。

搭載量はほぼ同じ。
まぁ日本機特有の「打たれ弱い=防御力の欠如」なんていう大問題もあるんだけど、一世代前の九七艦攻とほぼ同じ性能では・・・。



因みに同時期の米海軍のアベンジャーは・・・。

こんなの。

Grumman_TBF_Avenger.jpg

最大速度は天山より50km/hほど遅いけれど、搭載量や防御力は申し分なく、戦争中期から後期にかけて大活躍。戦艦大和撃沈の立役者でもあります。

多少太めではあるけれど(グラマン社の芸風)、やはり飛行機としてのデザインは優秀ですね。


で、このバラクーダ。
独戦艦テルピッツ攻撃などに参加するも、案の定、ソードフィッシュほど評価は得られずアメリカから輸入したアベンジャーに随時交代。

でも・・・何だろう。

この造形センス。


Fairey_Barracuda_II_of_814_Squadron.jpg


何となく「ナウシカ」とか宮崎アニメに出てきそうな・・・というか、

レトロフューチャーなSF映画に出てきそうな・・・というか、

かっこわるいんだけれど、何かもう一回見たくなる・・・というか、

そこはかとなく漂うB級臭さがまた何とも・・・というか、


イギリス軍用機って、今回の海軍機のみならず空軍機にもこのようなB級臭テイストが溢れる機体が多く、岡部いさく先生はじめ多くのファンがいます。



スピットファイアは格好いいのになぁ。

Supermarine_Spitfire_F_Mk_XIIs_of_41_Sqn.jpg
(大好きなグリフォンエンジン搭載のスピットファイアMk.XII)



しかしソードフィッシュ=「メカジキ」〜アルバコア=「ビンチョウマグロ」〜バラクーダ=「オニカマス」って・・・。

イギリス空母は築地の市場かいって突っ込みたくなるような命名センス・・・。



掲載した写真はすべてパブリックドメイン。Wikipediaからお借りしました。
posted by Ryota at 10:14| Comment(3) | 飛行機
この記事へのコメント
さすがに史上最大のマリアナ沖海戦だなゴルァ!大鳳、翔鶴、飛鷹が沈没したようだゴルァ!
瑞鶴もずいぶん攻撃を受けたようだな!飛行甲板が燃えているぞゴルァ!
不時着水するしかないぞゴルァ!
瑞鶴の天山艦攻だぞゴルァ!あわてるなゴルァ!大丈夫だ行くぞ!!!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄
 __________
/||´・ω・)||(;´∀`)||( ゚Д゚) \
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
Posted by もっずぱんつ at 2009年07月03日 22:11
英国のデザインセンスは、確かにカッコいいのと悪いのと両極端なケースがありますね。サンダーバードとかのセンスは日本人が見ても概ねカッコいいのに、大戦中の英国陸軍のヘルメットなんてどっから見ても不細工( ̄▽ ̄;)

アベンジャーは巨大な単発機でしたが、それを格納できる空母がアメリカにはあったってことでしょう。英国の空母は搭載可能な機数が限られた護衛空母的なものが多かったから、おそらくそこにできるだけ多数の機を積みたいという技術的なハードルもあったのかもしれませんね。主翼の位置とか、足の出方とかもその辺りの影響があったのかも。
Posted by Tad at 2009年07月04日 18:39
>皆様、いつもありがとうございます。

>もっずぱんつさん。
マリアナ沖海戦については、色々と書きたいこともありますね。アメリカ側からの視点とかで。

>Tad先生。
英陸軍の洗面器ヘルメットですね。当初アメリカも同じデザインでした。
実は蒋介石の中華民国陸軍はドイツ型ヘルメットでした。
空母の搭載機数は構造に影響されるところも大きいですね。
日本と英国は密閉型格納庫。アメリカは開放型格納庫になってから搭載機数が飛躍的に増えています。
Posted by Ryo at 2009年07月06日 09:34
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