2009年06月26日

美しくない(?)飛行機たち。

前回記事で久しぶりに飛行機について記述しました。
特に検索エンジンに沢山ヒットしたとか、励ましのメールを頂いたとか、罵倒のコメントがあったとか、そんなことは全くないのですが、自転車については私なんかより遙かに濃くてためになるblogを書かれる方が仲間内にも大勢いらっしゃいますし、音楽関係は音源アップがなかなかできないため(録音が大変&著作権上の問題)、どうも隔靴掻痒の感が否めず…。

そこで、昔から好きな飛行機と仕事のデザインを関連づければ、多少は面白い記事もかけるかな?と。


さて、前回は美しい飛行機についてちょっと書いてみました。

人間が使う機械は、用途と使用目的がシンプルであればあるほど、そのデザインは洗練され、そして美しくなる…。そんな気がします。

シンプルな機械の究極と言えば自転車ですね。
車輪二つ。クランクによる動力入力。チェーンによる伝達系。後輪駆動。
この形が決まってから100年以上構造に大きな変化はありません。

短距離&トラック用の競技車(ピスト車)はブレーキも変速ギアもペダルを回さなくても後輪が惰性回転するフリーハブも装備されず、まさに究極のシンプル。
(お願いですから上記競技用ピスト車を公道で乗ることだけは、絶対にやめてくださいね。後ろから見ていてとても怖い)

さて、飛行機ですが、ライト兄弟によるキティホークでの初飛行が1903年。
やはり100年以上の歴史がありますが、軍用民間を問わず使用目的&用途は多岐に渡り、また世界大戦という技術革新を急速に促進する歴史的出来事が二度あったため、非常に多くの機種が存在します。

如何に多数の機種があろうとも、それぞれの使用目的がシンプルであれば…。

その結果生み出された飛行機は、美しくなるはずなのです。


戦争は国を挙げての一大事ですので、そこで使われる兵器開発には国(=軍)の意向・主張が大きく反映されます。

1930年代半ばは第一次世界大戦終了から15年以上が経過し、次の技術革新へのリエゾン区間のような感じでした。

この時期に考えられた&提唱された新たな認識は、
●戦闘機の高速化に伴い、第一次大戦のような戦闘機同士の空中戦は起きないだろう。
●爆撃機の高速化に伴い、戦闘機は要らなくなるだろう。

などなど。あれ?じゃぁその高速化した戦闘機で高速化した爆撃機を…?

なんだか「矛」と「盾」みたいな主張が堂々とまかり通っていたわけですね(笑)。


まだ、第二次世界大戦前。

兵器開発にももうひとつ切迫感が無く、妙な理論と理想論が混在した時期。

上記の「矛」と「盾」を解消すべく、一つの戦闘機がかの大英帝国で生まれました。

どうせ戦闘機同士の空中戦なんて起きないんだから。

相手は爆撃機だけなんだから。

速い爆撃機でも同行して(横に並んで)機銃撃てば良く当たるんじゃね?
さらにどんな位置関係にあっても機銃をぐるぐる回せば良く当たるんじゃね?


機銃をぐるぐる回せば爆撃機だけじゃなく、戦闘機も墜とせるんじゃね?

ここで、飛行機を敵機に向けて撃つ。という本来非常にシンプルな戦闘機の姿が妙なことになります。


で、作っちゃったのがボールトンポールという会社。
できちゃった戦闘機がデファイアント。

Boulton_Paul_Defiant_Mk_I_in_flight.jpg

乗員はパイロットと機銃手の2名。

操縦席後方の出っ張りが、回転する動力銃塔。
ここに7.7mm機銃を4丁搭載。

そして戦闘機に不可欠な、前方へ向けての固定機銃は…ありません。
だって戦闘機対戦闘機の空中戦なんて起こらないんだもの。


で、実際に1939年。

第二次大戦が勃発すると、最初の頃こそハリケーンと誤認し、後ろから接近したドイツ機に回転銃塔から弾丸を浴びせて撃墜できたものの…。

同じエンジンを積んだホーカー ハリケーン。

Hawker_Hurricane_Mark_IV.jpg

こちらは至極真っ当に前方固定機銃を積んだ、従来ながらの「シンプル」な戦闘機。

何だかんだ言って大英帝国も、デファイアントみたいな戦闘機だけにするようなクソ度胸はなく、ちゃぁ〜んと正統派戦闘機も開発していたわけです。

低翼単葉+引き込み脚。ロールス・ロイス マーリンV(1030ps)登載。

スペックはほぼ変わらず、戦闘機という機種も一緒。

しかし回転銃塔なんていう重たい物とプラス1名の人間。

ハリケーン全備重量2,900kg。
デファイアント全備重量3,900kg。


ハリケーンより格段に重くなってしまった機体に、パワープラントはハリケーンと同じ。

ハリケーン最大速度531km/h。
デファイアント最大速度489km/h。

何とも鈍重な機体になっちゃった。

確かに相手が爆撃機だけなら、後年の日本やドイツの夜間戦闘機みたいに何とかなったかも…。

でも、ドイツは爆撃機だけではなく、メッサーシュミットBf109っていう普通に開発された「シンプル」な戦闘機も普通に攻撃してくる。

いくら、「いや我々は爆撃機専門ですから」と言っても聞いてくれるはずもなく、1940年のダンケルク撤退戦ではBf109にけちょんけちょんに一方的大敗。

つまり相手が戦闘機では全く歯が立たなかった。

また、第二次大戦でもやっぱり戦闘機対戦闘機の空中戦は、しっかり存在していた。




ハリケーンと

Hurricane.r4118.arp.jpg

デファイアント。

Boulton_Paul_Defiant.jpg


まぁ、デザインなんて感性ですから、どちらが美しいか?と聞いても、評価は分かれてしまうものです。

ただ、戦闘機としてどちらが美しい?どちらがかっこいい?と聞かれたら?

まぁ銃塔載っけている分だけ強そうには見えるかもしれないけれど、やはり美しいのはハリケーンではないか?と思うわけです。

片やスピットファイヤと並ぶ救国の戦闘機と賞賛され、14,000機生産されて戦後もフライアブルな機体が残るハリケーン。

片やイギリス軍パイロットからも“daffy(うすのろ)”とよばれ、1,000機程度の生産。

なんだかかわいそうですなぁ。

イギリスはどうもこの手の飛行機が好きなようで、同じ頃イギリス海軍ではブラックバーン ロックという戦闘機を開発しています。

Blackburn_Roc.jpg

これ見ると、まだデファイアントの方が戦闘機らしいですな。

やはりほぼまともに戦闘機としては機能せず、140機足らずの生産で終わっています。

まぁ、でも何というか…。

実際に搭乗していたパイロットや乗員はたまったもんじゃなかったと思いますが、何となく憎めないというか、お馬鹿というか、こういうところが英国らしいというか…。

妙に惹かれるものもありますね。

さらに英国はもう第二次大戦もそろそろ先が見えたか?という時期に、こんな艦上攻撃機も投入しています。

フェアリー バラクーダ。

Fairey_Barracuda.jpg

まぁ、何と言いましょうか、どうやったらこんなデザインになるのか…。

これは機会をあらためて記述しましょう。


このあたりのトホホな飛行機たちは岡部いさく先生の「世界の駄っ作機」に愛情たっぷりで描かれております。

宮崎駿監督の「雑想ノート」にも記載がありますね。


結局、戦闘機は前方に向けた固定機銃を装備し、パイロットが操縦して敵機に向けて自機を向け、射撃するほうがはるかに効率的なわけですね。

実際に戦場の空では飛行機は縦横無尽に機動するわけです。
回転銃塔の射手がいくら銃を動かしても、様々なGがかかる状況で、パイロットとの意思疎通がうまくできず、敵機の動きなどに追従できるわけがなかったのですね。


しかし、これを1935年頃の時代だから…、と馬鹿にはできません。

1960年代のベトナムの空で、実は似たようなことが展開されています。

当時、言われていたことは…。
「これからはミサイルの時代。戦闘機に機銃は不要」。


しかし実際のベトナムは全く違いました。

このネタもまた別の機会に。


掲載した写真はすべてパブリックドメイン。Wikipediaからお借りしました。
posted by Ryota at 12:30| Comment(6) | 飛行機
この記事へのコメント
突然のコメント失礼致します。
失礼ながら、相互リンクしていただきたくて、コメントさせていただきました。
http://sirube-note.com/pilot/

もしよろしければ、こちらのページから相互リンク登録していただけましたら幸いです。
http://sirube-note.com/pilot/link/register/
今後ともよろしくお願い致します。
oMEi0yMZ
Posted by sirube at 2009年06月26日 17:30
詳細は覚えてないのですが、飛行機にドーム状の銃座?っていうの?
・・・が付いたプラモを作った覚えがあります。
小学生の自分には、素敵でかっこ良く無敵に思えました。
子供の様な感性で作られたのでしょうか。(笑)
Posted by ka at 2009年06月26日 17:40
さまざまな歴史は奥が深いですね
デザインも機能もシンプルな基本は大事なんですね
自転車の乗り方もこ〜ぢさんから聞いてそんな感じがしました
まだまだ勉強させていただきます
記事の続きも楽しみしてます♪
すごいですね!相変わらず!!
Posted by atmos at 2009年06月27日 07:26
回転銃座は爆撃機や攻撃機からの発想なんでしょうが、やはりちょっと考えればドッグファイトには不向きだって分かりそうなもんだと思いますが、、、( ̄▽ ̄;)
ただ、もしこの時代に高性能の照準制御システムがあったら、人間を乗せない分、全く違った役割を果たせたかもしれませんね。

バラクーダは艦上攻撃機ということならば、当時の英国航空母艦のお家の事情も絡んでいるような気がします。
Posted by Tad at 2009年06月28日 08:26
    __
   /__|__
   (|| ゚∀゚)  飛行隊長殿、
   し|★|J    トテーモ勉強になりました。w
   |  ̄ |   飛行機の記事、うれしいですwゲラゲラ
   し ⌒J
Posted by もっずぱんつ at 2009年06月28日 23:16
>皆様、いつもありがとうございます。

>sirube様。
ありがとうございます。相互リンクさせていただきました。

>kaさん。
たぶん爆撃機ですね〜。防御用銃座なら十分強力な武器ですからね〜。密集編隊で撃ちまくられたら戦闘機もうかつに近寄れません。

>atmosさん。
そうなんですね〜。シンプル・イズ・ベストなんですが、どうしても余計なことをしてしまいますね。

>Tad先生。
今では当たり前の理論でも、やはり進化の最先端では試行錯誤の連続だったんでしょうね。
バラクーダに関しては、さすがTad先生。ご明察です。次回記述します。

>もっずぱんつさん。
もっずぱんつさんの知識にはなかなか及びませんが・・・。次回も続きで行く予定です。
Posted by Ryo at 2009年06月29日 07:15
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