2009年06月19日

美しきレシプロ双発機

atmosさんの記事を読んで、つい記述したくなりました。

21世紀の現代から見たら骨董品のような第二次大戦中の軍用機群の中で、二つのレシプロエンジンでプロペラを回して飛行していたレシプロ双発機。

その用途は戦闘機から爆撃機、攻撃機、偵察機など多岐に渡ります。

単発機よりは航続距離、搭載量に余裕があり、4発の重爆撃機よりははるかに軽快な機動性を保持。

大戦前〜大戦初期には長距離援護戦闘機なんていう無理難題を実現するための形態としても考えられました。

機首にエンジンを装備する単発機と違い、両翼にそれぞれ一機づつエンジンを装備する双発機は(ドルニエDo 335のような例外もありますが)、エンジンの無い機首を非常に美しく整形することが可能です。

今回は私の独断と偏見で、デザイン的に非常に美しいレシプロ双発機をご紹介しましょう。

まずは大英帝国から。

ブレニム、ボーファイターと軽爆撃機〜重戦闘機の系譜がありますが、決定版はやはりこれ。

Mosquito_600pix.jpg

デ・ハビラント モスキート。
奇跡の木製機と呼ばれ、スピットファイヤと同じロールスロイス・マーリンエンジンを装備。670km/hの快速を誇り、ジェット戦闘機のメッサーシュミットMe262が現れるまでは、ドイツ機がほぼ追いつけない速度で、夜間爆撃のパスファインダーからゲシュタポ本部への精密爆撃などに活躍。

大英帝国の飛行機はスピットファイヤのように非常に美しい飛行機を作るかと思えば、ボールトンポール デファイアントやフェアリー バラクーダのように、どうしても首をかしげたくなるようなデザインが出てくるお国柄。

そんな中でモスキートはデザイン的に破綻の無い、見事な曲線美。
「美しい飛行機は性能も良い」という言葉を見事に体現している航空機ですね。

以前のエントリでも紹介していますので、ご興味のある方は是非。


続いて第三帝国はドイツ。

さて、単発戦闘機ではメッサーシュミットMe109F〜Kや、フォッケウルフFw190Aのように非常に力強くかつ流麗なデザインを身にまとっていますが、こと双発機となると「ん?」(あくまで私の独断ですよ)となります。
たぶん双発機ならではの独創性にデザインがついて行っていない…ように思えます。爆撃機ではハインケルHe111はまだわかりますが、ユンカースJu88やドルニエDo17などは機首の処理がどうしても「?」。戦闘機もメッサーシュミットMe110、Me210〜Me410もどうももうひとつ垢抜けない。

Bundesarchiv_Bild_101I-417-1766-03A,_Flugzeug_Junkers_Ju_88.jpg
〈ユンカースJu88〉

そんな中、ハインケルHe219ウーフーは、直線主体のドイツ機デザインの中で、優美な曲線をまとった夜間戦闘機。
デザイン的には私はもうひとつ・・。的な感じもあるのですが、やはり美しい飛行機だと思います。

Heinkel_He219.jpg

性能的にも、モスキートには及ばないものの撃墜も果たしており、昼間使い物にならなくなって夜間戦闘機に使い回されたMe110や、爆撃機ながら速度性能が多少良かったため夜戦にも転用されたJu88などと違い、最初から夜間戦闘機として完成しておりドイツ夜戦の中ではピカイチですね。
ただ惜しむらくはナチスと不仲なハインケルの会社が設計したため、生産数が少なく、何となく日陰者扱いだったこと・・・。


さて、お次はアメリカ。

この国もご多分に漏れず、長距離援護戦闘機を双発機で計画していますが、何と言っても双発戦闘機で有名なのは、山本五十六長官機撃墜で名をはせたロッキードP38。

Lockheed_P-38_Lightning_USAF.JPG

他国のように後方旋回機銃や偵察員などを乗せず、双発単座に思い切ったところが良かったのか、双発戦闘機の中では最も活躍したと言って良いでしょう。

ただな〜。双胴ってのが私的にはもうひとつ美しくない・・・。
同じ双発戦闘機では海軍にグラマンF7Fというキレイな飛行機があるのですが、大戦には間に合っていない。

そんな中、大戦に間に合った双発の軽快な攻撃機があります。

ダグラスA-26インベーダー。

A-26_Invader_in_flight_.75_right.jpg

今回紹介している中では、最も搭載量が大きく攻撃力のある機体です。
その使い勝手の良さから、第二次大戦だけではなく、朝鮮戦争、ベトナム戦争まで従事。
モスキートやウーフーのような優美さはありませんが、まさにアメリカ的なユーティリティを持つ質実剛健な爆撃機/攻撃機です。

そして最後は我がニッポン。

大戦中の日本機は、初期の勝ち戦に携わっていた機はともかく、大戦後期の機はどうしても特攻という言葉から逃れられず、何となく悲劇そして悲惨というイメージにつきまとわれます。

大戦中の日本軍双発機と言えば、海軍なら「プリンス・オブ・ウェールズ」「レパルス」の英戦艦を撃沈した一式陸上攻撃機や九六式陸上攻撃機、B29迎撃に活躍した夜間戦闘機「月光」、陸軍なら同じくB29迎撃に従事した二式複戦「屠龍」、そして連合軍からは「写真屋のジョー」と呼ばれた100式司令部偵察機などが有名です。

しかし、海軍の陸上攻撃機は長大な航続距離を誇ったものの、防弾を軽視したひ弱な機体構造が仇となり、大戦中期からは被害続出。
月光や屠龍も、列強各国と同じく中途半端な長距離援護戦闘機出身であるため、夜間戦闘機にしか使い道がなかったのが事実。

そんな中、一式陸上攻撃機の後継として誕生しながら、急降下爆撃も可能なため、陸上爆撃機という名称で登場したのが海軍の陸上爆撃機「銀河」。
その優秀な性能ながらも、積んだエンジンがお約束の気むずかし〜い「誉」だったため、故障続出で低稼働率に泣かされました。
しかし、究極までムダを省いたその設計による機体は大変美しく、モスキートに匹敵と言っても過言ではありません(くどいですが独断です。わはは)。

P1Y_Kyokkou_Aurora_or_Ginga_Milky_Way_Frances_P1Y-1.jpg

国破れて「銀河」あり・・・なんて搭乗員達からも揶揄された機ですが、零戦なみの速度と一式陸上攻撃機以上の航続距離。
しかし搭載量ではA26に遠く及ばず、最高速度もモスキートには全くかないません。
それでも大戦後期の日本において、まさに適材適所であった飛行機ではないかと思います。
そして銀河の設計陣は戦後新幹線の設計に活躍するわけです。

こうしてみると、双発機ながらパイロットは1名、そして目的に特化して極限までムダを省いた設計。その結果のデザインが美しい。
そんな気がしてくる私のセレクトでした。


掲載した写真はすべてパブリックドメイン。Wikipediaからお借りしました。
posted by Ryota at 16:03| Comment(8) | 飛行機
この記事へのコメント
おお
おおお
すごい!!
詳しすぎる!!
本が書けそうですね!
モスキートという戦闘機はこういうものだったんですね
わたくしの蚊に悩まされた夜の話とは全然違ーーーう(笑)
そろそろスタートが切られましたね♪
しんみりと?
わははおほほと楽しんできてください♪
ジャージも今日届きましたよ!
感謝感激のデザインありがとうございました!!
Posted by atmos at 2009年06月19日 19:35
やっぱりマニアックな性格なんだね。
ジャンルは違えども、他人事じゃないと思います。(笑)
Posted by ka at 2009年06月20日 22:01
    __    飛行隊長殿ー! 飛行隊長殿ーーー!
   /__|__  レシプロ双発機来ましたねー イイナー ワクワクw
   (|| ゚∀゚)   P38はカコイイけど、ちょっと憎たらしいでせうw
   し|★|J    銀河はパイロット不足になる前に登場していれば、  
   |  ̄ |    もっと活躍していたかもしれませんね。
   し ⌒J
Posted by もっずぱんつ at 2009年06月21日 16:55
何なんですか、この溢れ出るような知識は?
英国のモスキートってやつは木製なんですね。
あの国は何でも木で作るんですよ。
30年前、地下鉄駅のエスカレーターも木製でした。
Posted by ランド at 2009年06月21日 18:00
なにげにモスキートが木製だったなんてことを知ってる世代です( ̄▽ ̄;)

私はユンカースの急降下爆撃機「スツーカ」が結構好きだったりするんですが、コイツは単発でしたね(^-^;
Posted by Tad at 2009年06月21日 19:03
>皆様、いつもありがとうございます。

>atmosさん。
ついモスキートに反応してしまいました。
ジャージ、早かったですね。是非レーパンも作りましょう!

>kaさん。
人に言わせるとオタクだそうです。まぁ子どもの頃から一番長い趣味ですからね〜。

>もっずぱんつさん。
そうですね〜。実は銀河、大好きなんですよ。こんど江草隊長のことも書こうかな。

>ランドさん。
ほんとにあの国は木にこだわりがあるようで・・・。日本もドイツもまねしましたが、使い物にならなかったです。

>Tad先生。
おぉ。スツーカ来ましたね〜。今度は単発急降下爆撃機特集やろうかな・・・。
Posted by Ryo at 2009年06月22日 07:50
ハセガハの模型にあったような?

さっぱり分らないけど飛行機って美しい。
Posted by ましこ at 2009年06月22日 08:23
>ましこさん。
銀河、モスキートは以前ハセガワから1/72で発売されていましたね。今は絶版かな。
現在国内メーカーだとタミヤからモスキートは1/72と1/48で、ウーフーは1/48が発売されています。A-26はイタレリかドイツレベルか・・・海外メーカーがラインナップしていたと思います。銀河もタミヤから出して欲しいなぁ・・・。
Posted by Ryo at 2009年06月22日 16:53
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