今日はちょっと最近感じたことをつらつらと・・・。
私の絵を見ていただいたからいただく言葉に「写真みたいですね」という言葉があります。
この間、他の作家さんのblogだったかfacebookページだったかで、「写真みたい」と言われることがあまりうれしくない・・・と描かれていました。
正直に言います。
「写真みたい」という言葉。私、いただいたらとてもうれしいです!
この絵に対しての批評=「写真みたい」という言葉には二つの意味があるのではないかなと思っています。
1まるで写真のように見える。すごいテクニック!(肯定的)
2写真と同じなら絵を描く意味ないじゃん。絵なら絵ならではの表現をすればいいのに。(否定的)1は割と絵を描く方ではなく、絵を見て楽しむ方からいただくことが多いような気がします。
2は絵を描く方、もしくは絵の鑑賞が趣味のような方からいただくことが多いような気がします。
あまりうれしくないと呟いた作家さんは2の意味で捉えられるのかもしれませんね。
私にとっては1でも2でも正直どっちでも良いです。
「写真みたいですね」と言われたら、写真に近く色や形状を表現できているのだなと素直に喜びます。
「写真と同じでつまらない」と言われたら、「どの写真と同じですか?」と聞き返します。
私の場合、確かに写真を参考に描くことが多いですね。というかほとんどそうです。
街角の風景を描いていると、現実問題、街角でイーゼル立ててずっと絵を描くことは難しいですね。
時間ないし。また、昨今のご時世じゃ通報だってされかねない。
と言うわけで写真を沢山撮ってそれをベースに描くことが多いですね。
基本、実際の風景を自分の目で見て、そのイメージは頭に残しますけど。
だから、私の撮った写真を見て、「これと同じじゃつまらない」と言われるならわかりますし、同じと言われたら「そうなのかな」と思います。大いに反省し、努力をさらにしないといけません。
まぁ、実際には自分のイメージ優先して、撮った写真とは色々と変えて描いていますけどね。
それに、完全に写真と同じにはやっぱり描けません。そこまで上手くないし色鉛筆という画材の限界もある。
でも、漫然と抽象的に写真全般をイメージして「写真と同じ」と批判的に言われるならば、その言葉はほとんど気にしません。
何故ならその言葉は「写真」や「写真家」の方々にも大変失礼なんじゃないかな?と思うわけです。
だって「写真家」は沢山いらっしゃるわけですし、それぞれの方が個性を持って仕事をされているわけですよね。
「こういう絵(この場合は写真のことですね)が欲しいから、あのカメラマンに頼もう」とか、写す対象によって得意なカメラマンがいますので、そういう方に頼もうとか、それぞれ取捨選択するわけですよね。
私もグラフィックデザイナーですので、プロのカメラマンの仕事は目の当たりにします。
的確にディレクターの指示通りの写真を撮れるカメラマンはやっぱりプロですし、職人だなぁと思います。
「写真と同じでつまらない」という言葉は、「写真」や「写真家」の方々をも十把一絡げにしているような気がしちゃうんですよね。
自分もグラフィックデザイナーとして仕事をしているときは、やっぱり自分のことは職人だと認識して仕事をしています。
イラストレーションの仕事をいただくときもそうですね。職人です。
間違っても自分のことを「アーティスト」とか「芸術家」とか思うことはありません。
画家として絵を描くということは、単純に「クライアントからの指示で描くのではなく、自分のイメージで自分の好きなように描くこと」だと思っています。
クライアントからの指示が無いだけで、基本的にはイラストレーションの仕事と大差ありません。
要は職人的に描いているわけですね。
だから、技術を褒めてもらえる「写真のようですね」というお言葉が大変うれしいんですよ。
色鉛筆をメイン画材で絵を描いている売れない画家として自分を見ても、「アーティスト」とか「芸術家」という風に自分を思ったことは露ほどもありません。
あくまで「職人」ですね。画家としての自分も。
その職人が描いた絵にもしかして「芸術性」みたいなものを感じていただけたら、それはそれですごく嬉しいことです。
「写真のように描く技術」を認めていただくのと同じくらいに。
以前描いた絵と、その元となった写真。
比べてみていかがでしょう?
写真みたいに描けていますでしょうか?
それとも写真と同じでつまらない絵でしょうか?
どちらの評価でも私にとってはとてもありがたい評価ですね。


写真みたいという言葉を否定的に捉えている方は一度、「
ホキ美術館」を訪れてみてください。
写実絵画の現物を目の当たりにすると、「写真みたい」という言葉では表現できない圧倒的な迫力の絵画群にノックアウトされます。
ここに収蔵されている絵を見ていくと、自分がいかにまだまだ未熟であるか、いかに物事をちゃんと見ていないかを思い知らされます。
まだまだ勉強ですね。
それと、ちょっと前の話ですが・・・。
私もネットで見たことがあるのですが、ある色鉛筆画家がメディアに取り上げられたことがあります。
事故が元で仕事ができなくなった料理人が、リハビリを兼ねて色鉛筆で絵を描き始めた。
その絵はまさに写真のように緻密で、それが話題になり個展や絵の販売をするようになった。
徐々に話題になり、地方紙などで取り上げられるようになり、
絵の注文も増えてきて、実際に絵をオーダーした人の話もネットに載るようになる。
ところが、ある方が絵をオーダーすると、すごく短時間で出来上がってきた。
上がった絵を見てみると、どこかで見たような構図。
すでにメディアで発表されていた写真と同じではないか。
「さては写真を丸写ししたか!? 著作権上も問題になるのでは?」
さらに上がった絵をよく見るとうっすらとロゼッタパターンが見える。
ロゼッタパターンとは印刷の時に網点が重なって見える模様のようなもの。
要は、ただの写真印刷だったわけです。
「これは絵ではなくて、ただの印刷物のプリントアウトではないのか?」
と問いただすと10数万の代金が返却されてきた・・・。
その後、その画家のホームページは閉鎖され、販売サイトもクローズされました。個展も中止。
何とも示唆に富んだ話ですよね。
絵を描く人のモラル。絵を買う人の知識。
私の原画をご覧になった方はよくわかると思うのですが、間違っても近くで見たら写真と同じじゃありません。
色鉛筆のタッチが結構荒々しく残っていますし、デザインナイフで削った跡も生々しい。
雑というかラフというか。「写真と同じ」なんて言ったら「写真」と「写真家」への冒涜ですね。
でも、これが「絵」としての「味」なのですよ。
さて、がんばって絵の続きを描こうっと。